泉くんの眼って…なんだか乾いてる:寄生獣の名言
村野里美の主人公泉新一への気持ちが表れた素晴らしい名言
寄生獣 第34話「鉄とガラス」より引用
「泉くんの眼って…なんだか乾いてる」が使われた背景
探偵倉森にミギーのことがバレてしまった主人公泉新一は精神的にも追い込まれてしまいます。
このままでは、これから彼女である村野里美にも会えなくなってしまうと思い、夜の公園で会うことにします。
村野里美は、新一に自分と映画の約束があった日に加奈と会っていた理由を尋ねます。
「いろいろ話したいと思っていたのに何も言えなくなっちゃったな」
新一は困ったように口をつぐみます。
「言えば!!何だって言ったら!!」
「加奈さんのことばかりじゃない…泉くんずっと悩んでるでしょ?…」
「その悩みが大きすぎちゃってさ…人が死ぬ…ぐらいのことじゃ大して驚かなくなってんじゃないの?」
村野里美は溜めていた思いをぶつけるかのように新一に問いかけます。
その里美の気持ちに新一は抱えているもの全てを話してしまいたい、と心が揺れます。
「は…話すよ…話すから!里美!おれの体!おれの体には!!」
必死に話そうとしている新一が、後ろから里美を襲おうとしているミギーを必死に抑えていています。
ミギーは自分の事がバレてしまっては困るので話される前に里美を殺そうとしますが新一がそれを抑えているのです。
里美が新一に振り向くと普通の表情の新一が腕を組んでいます。
「本当になにもないよ」
がっかりする里美。
「あたしってまるで信用ないんだ」
「信じてもらえないんじゃしょうがないな」
『泉くんの眼って…なんだか乾いてる』
公園から去る里美に新一は「さよなら…」と心のなかでつぶやきます。
里美のことが大事で、里美に話せない理由すらも言えない苦しい新一の気持ちと、話してもらえない信用してもらえないという里美の気持ちが見事に描かれたシーンでした。
そして素晴らしいのはその「乾いている眼」です。
本当に眼が乾いているように描かれており、素晴らしい画になっています。
作者岩明均の画
岩明均の傑作集「骨の音」の巻末に収録されている「アシスタントで覚えたこと」でマンガ家の画について描かれています。
岩明均は「同棲時代」などの作者 故・上村一夫先生のアシスタントになりました。
上村一夫先生は「昭和の絵師」と呼ばれ、劇画タッチの画風を確立した漫画家です。
この上村一夫先生はアシスタントに背景を描く際に「好きなタッチ」で描けば良いと指示したそうです。
マンガ家からするとアシスタントに好きなタッチで背景を描かれると画が違いすぎてしまい、とんでもないことになってしまいます。
しかし、上村一夫の描く人物はどんなタッチで背景を描いても画全体を圧倒し、支配してしまうのです。
「これが画の強さというものか」と岩明均先生は学んだそうです。
第60話に出てくる老婆 美津代の新一を送り出す表情は素晴らしいですし、第18話の冒頭で新一が涙を流す眼も非常にリアルに描かれています。
今回の岩明均先生の描く「乾いた眼」が圧倒的な画力を感じさせたのもアシスタント時代の経験から来るものなのかもしれません。