地球上の誰かがふと思った『人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか……』:寄生獣

この言葉から「寄生獣」の全てが始まった!「寄生獣」を言い表す名言

いくつの森が焼かれずにすむだろう
寄生獣第1話「侵入」より引用

冒頭ナレーションから、パラサイトの発生を読み解く

寄生獣の冒頭はこのナレーションから始まります。

『地球上の誰かがふと思った』『人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか……』
『地球上の誰かがふと思った』『人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるのだろうか…』
『誰かがふと思った』『生物(みんな)の未来を守らねば…』

ここからパラサイトが栗のような形状で空から降ってくるシーンになります。
このシーンのため良くパラサイトは宇宙人のように解釈されますがナレーションの言葉から察するに、パラサイトは地球上の誰かの願いから生まれたと考えるのが妥当です。
つまり、パラサイトの起源は我々と同じ地球と考えるべきでしょう。

作者 岩明均先生のデビュー作にて

このナレーションによる始まり方について作者の岩明均先生はこう「付記」にて説明しています。
「寄生獣の開始・第一話を描いた頃、世間は現在ほどエコロジー流行りではなく、環境問題についてもさほど騒がれていなかった…第一話の冒頭では人類の文明に対する警鐘という雰囲気で、すんなり始められたのだが…」

この寄生獣の開始は1988年で、たしかにエコなどという言葉もなく、環境問題も今ほどシビアには考えられていませんでした。
そのような時代に、この冒頭のナレーションで始めた作者は慧眼だったと言うべきでしょう。

さらに、作者はこのナレーションにある「人間の数が半分になったら…」という考え方をもっと以前から持っていたようです。

作者の岩明均先生は1985年に、ちばてつや賞に入選し、「ゴミの海」にてデビューします。
この「ゴミの海」で主人公の田村が自殺志願者の女の子を見ながら「人が一人減りゃあ、それだけ街もきれいになるってもんだろ」と言うシーンがあります。
このセリフは寄生獣冒頭のナレーションに良く似た内容です。
作者は「寄生獣」を描く何年も前からこの思いを持っていたことが伺えます。

冒頭のナレーションの意味

作者は「付記」にこのようにも書いています。
「かくして第一話の冒頭の言葉は、人間のある種の代表である広川市長が引き継いでくれ、…」

作者の言うように、この冒頭のナレーションの言葉は第55話「寄生獣」にて広川市長が

「…地球上の誰かがふと思ったのだ…生物(みんな)の未来を守らねばと…」

と、そのままの言葉で言います。
しかし、広川市長はその直後人間の手で殺されてしまいます。
パラサイトを産む思いを持った広川市長は、人間の手で殺されてしまうのです。

この冒頭の言葉は作者がずっと抱えている思いであり、冒頭から最後まで「寄生獣」の哲学的テーマの基盤としてあり、人間のエゴと地球のエコの矛盾を読者に突きつけてくる名言となっています。

ちなみに映画「寄生獣」の冒頭もこのナレーションから始まっていますが、パラサイト田村玲子役の深津絵里さんの声で読まれていました。

このナレーションをパラサイト役の人が言うというのも意味深です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この名言好き?

下の「コメントを送信する」ボタンを押してね。

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)