シンイチ・・・『悪魔』というのを本で調べたが・・・一番それに近い生物は、やはり人間だと思うぞ:寄生獣
ミギ―による人間を客観的かつ的確に表現した名言
寄生獣第3話「接触」より引用
ミギ―が語る人間を言い表す名言
世界各国で起きているミンチ殺人が寄生生物によるものと分かり、主人公泉新一がミギーに「このまま黙っていていいのかなァ…」とつぶやきます。
正体が分かっているのは自分たちだけなのであり、犠牲者をこれ以上出さない為にもミギーの存在を発表するべきではないかとミギーに語ります。
しかし、ミギーから見れば、同種である「仲間」が食事をしているだけであり、大した問題ではありません。
その後、口論となりミギーは自分に危害を加えるような行動をすれば「視力や聴力を奪うくらいのことはできる」と硬化させた刃を向けながら新一を脅します。
あまりの恐怖に思わず「悪魔…!」と叫ぶ新一。
それに返したミギーの言葉です。
『シンイチ・・・『悪魔』というのを本で調べたが・・・一番それに近い生物は、やはり人間だと思うぞ』
『人間はあらゆる種類の生物を殺し食っているがわたしの『仲間』たちが食うのは ほんの1~2種類だ。質素なものさ。』
まさに客観的な意見です。
人間から見れば「同種食い」「共食い」をするパラサイトは「悪魔」という形容にピッタリでしょう。
しかし、何種類もの動物を殺し食べ続けている人間の方が、より残酷で「悪魔」のような存在と言えるのではないでしょうか?
人間中心の見方で見るとたしかにパラサイトの方が「悪魔」ですが、人間を他の動物と同列として捉えてみると全動物にとっては人間の方が「悪魔」的な存在なのかもしれません。
このようなミギーの客観的な見方は「人間とは何か」を問いかけ、この作品の哲学的なテーマを高めています。
マンガや小説では「人間を食べる生物」が出てくる作品があります。
それらの世界では、その生物が「敵」であり「悪者」になります。
「敵」を主人公が頑張り苦労して倒しハッピーエンドのような展開がほとんどですがこの「寄生獣」は違います。
今回の名言でも分かるように寄生獣では「人間を食べる生物」という設定が「人間とは何か」を問いかける為の仕掛けになっているのです。
これが「寄生獣」の大きな魅力になっています。
新一のTシャツ
新一は、先ほどの「悪魔とは人間のことだ」というミギーの意見に「そんな理屈聞きたくもないよ」と言い、認めませんでした。
自分だけがミンチ殺人の犯人を知っているという事実が重すぎ、聞き入れられなかったのです。
その後、いろいろ考えながら散歩に行きます。
この会話をしている時の新一が着ているTシャツの胸の辺りには「DELUSION」と書いてあり、その下には「WANDER ABOUT」と書いてあります。
DELUSIONは「迷い、惑い、 妄想、 思い違い」という意味であり、WANDER ABOUTは「徘徊する、まごまごする、放浪、まごつく、さまよう」という意味があります。( Weblio辞書より)
この時の散歩は、まさに「迷い、惑い」ながら「徘徊、さまよい」ます。
これも岩明均先生の粋な仕掛けですね。
この名言は物語を通して問われる「人間とは何か」というテーマのひとつを表しています。