もう死んだんだよ……死んだイヌはイヌじゃない イヌの形をした肉だ:寄生獣

主人公泉新一が変わっていく様を表した名言

死んだ犬は犬じゃない
寄生獣第18話「人間」より引用

「もう死んだんだよ……死んだイヌはイヌじゃない イヌの形をした肉だ」が使われた背景

主人公泉新一はミギーの細胞と混ざってから涙が出なくなったことを気にしていました。

そんな時、彼女である村野里美と登校している時にホコリが目に入り涙が出で驚きます。

「心の問題…かなァ」

そんなことを思いながら歩いていると、新一は強くなった聴力でかすかな助けを呼ぶ声を聴きとり、交通事故にあった子犬を見つけ介抱します。

出血が多すぎ、助からないことが分かったので公園へ連れて行き、村野里美と看取ることになりました。

ベンチに座った新一は膝の上に子犬を乗せ抱きながら看取ります。

新一は子犬の亡骸をつまむようにつかみ、公園のゴミ箱へ捨ててしまいます。

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それを見た村野里美は
「信じられない!」
「子イヌがかわいそうだ!」
と新一に訴えます。

しかし新一は
「かわいそうったって…死んでるんだぜ?」
もう死んだんだよ……死んだイヌはイヌじゃない イヌの形をした肉だ
と、まったく感情が読めない無表情で里美に言い返します。

里美は「違う、違う」と呟きながら逃げるように、その場から立ち去ります。

普通の人間の感覚だと新一の行動は異常です。

村野里美の言うように「違う」でしょう。

しかし何が違うのかと聞かれると答えにくい問題です。

これは「生命」を考えさせるテーマなのです。

「未完」での名言『堕ろしたガキだってただの肉』

岩明均傑作集「骨の音」に収録されている「未完」にて今回の名言と同じようなセリフが出て来ます。

誰とでもセックスをするという噂のある黒田美由加が近親相姦でできた子どもを堕胎したことを告白し

堕ろしたガキだってただの肉…
と叫びます。

この作品のテーマは「生命」ですが、まさに今回の新一の名言と重なります。
「未完」は1988年に発表されており、作者は「ただの肉」というフレーズを使い、生命とは何なのかと問いかける仕掛けを以前から使うことが多いようです。

村野里美が去った後、考えなおした新一は子犬の遺体を公園の木の下に埋め埋葬します。
そして生命の循環を思い、里美の事を思い、自分の間違いを悔やみます。

今回の名言は作者が寄生獣を描く何年も前から扱っているテーマであり、新一の変化を表しながら「生命」とは何なのかと考えさせられる絶妙な仕掛けとなっています。

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