“この種を食い殺せ”だ:寄生獣
寄生獣の骨格を成す名言。「寄生獣」という作品はこの名言から始まったと言っても過言ではない
寄生獣第8話「種」より引用
“この種を食い殺せ”だの意味
第8話で田宮良子は妊娠したことを学校側に追求され学校から去ることになります。
これにより主人公泉新一を生かしておく理由が無くなり、去る前に新一と会いその時の会話でこの名言が出ます。
田宮良子は言います。
「地球上の生物はすべてが何かしらの『命令』を受けているのだと思う…」
この『命令』とは生まれながらにして生物に備わっているもので「本能」と呼ばれるものであろうと推測されます。
しかし新一にはその『命令』の意味が分かりません。
田宮良子は理解できない新一を見てその命令を具体的に言います。
「わたしが人間の脳を奪ったとき、1つの命令がきたぞ…」
「“この種を食い殺せ”だ」
ここでパラサイトたちの「同種喰い」という性質の根本が明らかになり、「脳を奪ったとき」に命令がきたということなので、ミギーが人間を食べない理由の説明にもなっています。
ミギーと後に登場する「ジョー」が人間を食べないのは脳を奪えなかったからなのでしょう。
「この種を食い殺せ」というセリフは後藤との最後の戦い(62話「朝」)でも後藤と一度同化したミギーが口にしますが、それは後藤を通して「地球」の人間に対する強い憎しみを表しているようにも見えました。
作者である岩明均先生は、この後藤について『「美しき野生」「偉大なる大自然」の代表選手である』と通常版の最終巻「付記」にて表現していることから、あながち間違いではないでしょう。
「この種を食い殺せ」は、この作品の中で、地球に対しての人間の罪をあぶり出す大事な設定であり、「寄生獣」を哲学的な作品に昇華させている最も大きな要素なのです。
映画「寄生獣」での『“この種を食い殺せ”だ』
この名言は映画「寄生獣」にも出て来ます。
しかしこのセリフは原作とは違い後藤が言います。
映画では原作とだいぶストーリーが変えられており、『”この種を食い殺せ”だ』も田宮良子ではなく後藤が新一に言うだけです。
後藤には五匹のパラサイト共生しているため「この種を食い殺せ」という思いも他のパラサイトと比べ5倍あることになります。
そのため映画では後藤にこのセリフを言わせたのかもしれませんが、深津絵里ファンである私としては原作通りに田宮良子に言ってもらいたかったです。